Under the Rose 6―春の賛歌

Under the Rose 6―春の賛歌 (バーズコミックスデラックス)

Under the Rose 6―春の賛歌 (バーズコミックスデラックス)

仕事帰りにふらっと本屋に寄ったら、6巻が出ていました。
この漫画は「Webコミック GENZO」に連載されている漫画で、年に一度しか
単行本が出ません。


私は古い人間ですので、どうもWEBコミックは苦手なんですが「Under the Rose」に
先立ち発表された「Honey Rose」がどうしても読みたくてDLしました。
手に入れたくても紙媒体では再販されなかった本もこうやって読めるとはDL販売も
案外良い物かもしれません。


この「Under the Rose」は19世紀のイギリス伯爵家が舞台。
しかし、森薫さんの「エマ」とは異なり、心が抉られるようなストーリー展開です。

森さんが映像美のクリエイターだとしたら、船戸さんはストーリーテラーなのだと
思います。私の根っこに潜む「何か」を引っ張り出してくれる「原点のようなもの」だと
言っても良いかもしれません。心が弱っている時に読まない方が、いや、だからこそ、
読んで欲しい。人は人と接触することで化学反応を起こし、変わっていく。
表面上では分からない人の奥深さ、偽善、優しさ、エゴ・・・様々な物が盛り込まれて
います。


私は英文学専攻でしたので、オスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」を
卒論に選びましたが、やはりあの時代の「美徳」と「欺瞞」が良く表現出来ていると
感じています。時代物としても楽しめますが、現代人にも通ずる部分も沢山あります。


読みながら涙が溢れてくる・・・そんな漫画です。
人によってどの場面が琴線に触れるかは分かりませんが、きっとあなたの心に残る
名作のひとつだと思います。



【以下ネタばれありの感想】
個人的には、アンナさんの今後が物凄く気になります。
互いに傷つきたくなくて、逃げ回っていて、腹割って話すのが遅すぎたんですよね。
アーサーもアンナさんもどっちもどっちかなと。
男性って後回しにしたがる所があるけど。それに五番目の子が死産でその後、子供を
産めなくなった妻の心理が理解できない癖に何が「私達の罰」とか「女性としては
愛情を感じてないけど家族としては大事」だよ!って言いたい。
だから外で「理想の家庭を作りました☆てへ(ハート)」と抜け抜けとよく言うわ、
この男!やたらと誰にでも優しいのは悪く思われたくないし、嫌われたくない弱さの
裏返しで、妻に愛されなくても冷たくも出来ず、中途半端に接していただけではないかと。


勿論、妻であるアンナさんの屈折した性格も大問題だけど、ある面では夫のアーサー
より大人(ライナスやロレンスに対する対応)な面もあったりするし。
大人の女性としての愛情面だけが不安定に育ってしまったんだよね。
昔のお嬢様ってあんな感じだったのかも。幸せな偽りの家庭を作ろうとした夫と結婚
した事の方が不幸だったのかもしれない。


「今更離婚も出来ないし、かと言って子供達の母親として冷たくはできないし・・・」
のループだったんだろうかと。結局、こいつ子供のことしか考えてない。
「お前達がいたから離婚できなかったんだ」って言ってる夫婦みたい。
愛してもらえないから愛さないように努力したって・・・・そりゃ「愛してたから
愛して欲しかった」ってことだろうに。そう言えば良かっただけだろう?
なんかこねくり回し過ぎてお互い伝わんないよね。でも夫婦ってそんなものかも。
いずれにしても続きが気になって「GENZO」を購入してしまいそうではないか!